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胃がんリスク判定(ABC分類)ってなに?

血液検査で、ピロリ菌感染の有無と胃の粘膜の萎縮程度を調べ、胃がんの発症リスクの度合いに応じてA・B・C・Dに分類・判定をする検診方法です。

平成31年1月から、札幌市でも採血による胃がんリスク判定が実施されます(詳しくは“札幌市胃がんリスク判定のお知らせ”をご参考にして下さい)。
それに先駆けて私が、“ヘリコバクターピロリ菌感染症認定医”として“胃がんリスク判定(ABC分類)”という聞きなれない検査について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。

胃がんリスク判定とは、採血で“ピロリ菌抗体検査”と“血清ペプシノーゲン検査(以下PG検査)”を行いその組み合わせで、胃がん発症のリスクを判定するものです。
大まかですが、血清ピロリ菌抗体はピロリ菌感染の有無を表すもので、PG検査は胃の粘膜の萎縮の程度を表すものと理解して下さい。
その判定結果は以下のA群・B群・C群・D群の4群に分類されます。

A群:
ピロリ菌抗体(-)PG検査(-)
ピロリ菌に未感染で萎縮がなく、将来胃がん発症リスクのほとんどない人 
B群:
ピロリ菌抗体(+)PG検査(-)
ピロリ菌に感染していて、萎縮のない(もしくは軽度)の人で、将来胃がん発症リスクのある人
C群:
ピロリ菌抗体(+)PG検査(+)
ピロリ菌感染により胃粘膜の萎縮がある人で、将来胃がん発症リスクの高い人
D群:
ピロリ菌検査(-)PG検査(+)
ピロリ菌感染により胃の粘膜の萎縮が高度に進んだために、ピロリ菌が胃に住めなくなった人で、将来胃がん発症リスクの最も高い人(ピロリ菌既感染)

よって胃がんの発症リスクは、D群>C群>B群>A群の順に高くなると理解して下さい。
以上の結果B群・C群・D群の判定を受けた方は、専門医と相談の上、内視鏡検査を受けて胃の状態を確認し、尿素呼気試験等でピロリ菌感染が認められた場合は、除菌治療を受けて下さい。
A群と判定された方は、健康な胃粘膜で胃炎の可能性は低いと言えます。但し、胃がんの可能性が全くないわけではありませんので、胃痛等の症状がある場合は専門医を受診して下さい。

ちなみに、除菌後の人は胃がんリスク判定は行わず、E群として内視鏡検査での胃がんのスクリーニング検査を定期的に受ける事が重要です。

但し、このABC(D)分類法の問題点と注意点があります。
①A群の中にもピロリ菌感染者(現感染)やピロリ菌既感染者がいる可能性がある事
②胃がんリスク判定(ABC分類)は胃がんの発症リスクを評価するもので、
 胃がんそのものの診断は決してできない事(胃がん検診ではない)
 よって、最終的には専門医に相談の上で、内視鏡検査や尿素呼気試験等を組み合わせて
 より確実なピロリ菌感染と胃がんの早期発見を行う必要があります。

血清ピロリ菌抗体と血清ペプシノーゲン法とは具体的にどういうものでしょうか。

1.血清ピロリ菌抗体

 これは、皆さんにも比較的わかりやすいと思いますが、ピロリ菌に感染していると、その人の血清ピロリ菌抗体価が高くなります。その数値によって現在ピロリ菌に感染しているか否かがある程度わかるのです。これは採血で判定できるため、最も簡便で、すでに各検診のオプション等で行われています。
但し、抗体価の判断が問題で、最新の解釈ではその値によって

  • 血清ピロリ菌抗体価 3U/ml未満  
    陰性:ピロリ菌感染の可能性は殆どない
  • 血清ピロリ菌抗体価 3.0~9.9U/ml 
    陽性(陰性高値):ピロリ菌感染の可能性あり要精査
  • 血清ピロリ菌抗体価 10U/ml以上  
    陽性:ピロリ菌感染の可能性高く要精査

と分類することで、ピロリ菌感染者(=胃がんの発症リスクの高い人)をより正確に発見できるとされています。要精査とは、胃内視鏡検査を行った上で、ピロリ菌胃炎を疑った場合は尿素呼気試験等で、ピロリ菌感染の確実な診断を受ける事です。
但し、抗体価が低い人の中にも現感染や既感染の人が紛れている可能性はあり、一度は専門医と相談の上で、内視鏡検査や尿素呼気試験等の組み合わせで、より確実な診断をすることをお勧めいたします。

2.血清ペプシノーゲン検査(PG法)

 ペプシノーゲン(以下PG)とは、消化酵素ペプシンの前駆物質で、胃内に分泌されます。
そのうち、PGⅠは胃底腺から分泌され、PGⅡは胃底腺だけではなく、幽門腺・噴門腺等からも分泌されます。
ピロリ菌に感染していない胃粘膜は、血清PGⅠは40~50ng/ml・PGⅡは8~10ng/ml PGⅠ/PGⅡ比は5.0≧となっています。
ピロリ菌に感染すると、まず胃の炎症が起こり、その後胃の粘膜の萎縮が進みます。
胃粘膜の萎縮が進むという事は、胃底腺が萎縮する事ですので、胃粘膜の炎症→萎縮に伴ってPGⅠとPGⅠ/PGⅡ比が低下するため、PG法は胃の粘膜の萎縮の程度を表すものと考えて下さい。
PG法陽性とはPGⅠ≦70ng/ml かつ PGⅠ/PGⅡ比≦3.0 の場合で、胃の粘膜の萎縮が始まっていると考えて下さい。
以上やや複雑ですが、大体お分かり頂けたでしょうか?
繰り返しますが、この胃がんリスク判定(胃がんABC分類)はあくまでも胃がんの発症のリスクをある程度反映しますが、胃がんそのものの診断ではない事(胃がん検診ではない)、またA群の中にもピロリ菌現感が混入していることがある事等を、皆さんが良く理解して、最終的にはその判定結果を専門医とよく相談した上で評価する事を重ねてお勧めいたします。

ご不明な点がございましたら、お気軽に当クリニックにお越しください。