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ピロリ菌について

皆さん、最近盛んに新聞やマスコミで取り上げられている“ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)”という菌の名前を聞いた事がありますか?
近年、日本における胃がんの原因のほとんどがこの胃に特異的に感染する“ピロリ菌”が原因であることが明らかになりました。
ピロリ菌に感染するとほぼ100%慢性胃炎になります。この慢性胃炎(活動性胃炎)が胃十二指腸潰瘍・胃がん・胃MALTリンパ腫・機能性デスペプシア・胃ポリープ・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)等を引き起こします。従って、胃にまつわるほとんどの病気が“ピロリ菌感染”が原因となって発生します。よって、胃がんをはじめとするこれらの胃関連の病気を予防するには、“ピロリ菌”を除菌することが何より大切です。
ピロリ菌の感染率は、高齢者ほど感染率が高く、50歳以上では約70~80%を占め、20代~30代では10~20%、10代では5%程度となっています。

呼気中13CO2分析装置:POCone

ピロリ菌の診断には、種々ありますが、胃カメラでピロリ菌胃炎が疑われた場合、保険で尿素呼気試験を行うことができます。これは、全く苦痛を伴わない検査です。検査薬(錠剤)を水と一緒に飲む前と飲んだ後(20分後)に2回小さな袋を膨らませて、呼気を採取するだけです。その袋を専用の装置(呼気中13CO2分析装置:POCone)に入れて、たった2分でピロリ菌感染の判定ができます。当院ではこの装置(POCone)を設置しましたので、胃カメラ後に、すぐにその場で“ピロリ菌感染”の有無を判定できます。
ピロリ菌陽性の場合は、除菌をお勧めします。
除菌方法は“胃薬と2種類の抗菌薬”の3剤を1日2回7日間飲むだけです。現在優れた胃薬が認可されたため、1次除菌で約92~94%の人が除菌できます。1回で除菌できなかった場合でも、2回目に“胃薬と別の抗菌剤”をやはり3剤1日2回7日間飲むと、残りの約90%が除菌できます。すなわち2回の除菌で99%以上が除菌できます。
ピロリ菌除菌による胃がん抑制効果は、皆さん驚くと思いますが、20代~30代までに除菌すれば男女ともほぼ100%胃がんが抑制できると言われています。除菌による胃がん抑制効果は40代で90%、50代で70%、60代~70代でも30~40%の抑制効果があります。従って何歳であっても、ピロリ菌が陽性の場合は除菌するべきだと考えられています。
ピロリ菌感染は、主に胃酸が十分にない乳幼児期に感染し、そのまま成人になるまで持続感染しますので、できるだけ早い時期にピロリ菌感染の有無を調べることが推奨されております。中学生のピロリ菌感染率は約5%と言われています。まず、検尿による抗体検査で検査後、陽性の場合は尿素呼気試験などの2次検査をお勧めします。ただ、胃カメラを伴わないこれらの検査は保険適応が認められていないため、保険外診療となります。最近地方自治体では、自治体等が費用を負担して中学生のピロリ菌検診を行っているところも増えてきています。中学生・高校生のうちにピロリ菌感染を診断して、10代~20代のうちに除菌すれば、その子はほぼ100%胃がんにならないことが明らかとなっています。
日本におけるがんによる死亡率は、2013年統計で胃がんは、男性では肺がんに次いで2位、女性では大腸・肺についで3位で、毎年5万人が胃がんで亡くなっています。部位別罹患数(どの部位ががんにかかりやすいか)は2011年統計では、男女計では胃が1位を占めます。つまり、日本人のがんは“胃がん”が最も多いことになります。その胃がんを、早期にピロリ菌を除菌することで、予防できることが判ってきたのです。しかも、その診断方法と除菌方法は決して大変なものではありません。
以上の理由で、私はできるだけ多くの方にピロリ菌の診断と除菌をお勧めいたします。
詳しくは、当院にお気軽にご相談にお越し下さい。

(参考文献)
1.胃がんは「ピロリ菌除菌」でなくせる 浅香正博・秋野公造著 潮出版社
2.これでわかるピロリ菌除菌療法と保険適用 高橋信一著 南江堂